JOURNAL
初出 · Re-birth
【連載】新卒採用を、学生と企業でつくりなおす。(第5回)

第5回|採用の前に、つくり直すべきものがある
――新卒を「迎える準備」は、できていますか
「最近、採用が本当に難しくなった」
これは、多くの企業の方から聞く言葉です。
合説に出ても、思ったほど手応えがない。
応募が集まらない。
ようやく採用できても、数年以内に辞めてしまう。
一方で、採用活動そのものを怠っている企業は、ほとんどありません。
ナビサイトに掲載し、説明会を開き、面接も丁寧に行っている。
それでも結果につながらない。
ここまで話を聞いてきて、強く感じるのは、
問題は採用手法だけではない、ということです。
採用はできても、「受け入れ」はできているか
企業と学生、双方の話を聞く中で、
ある共通点が見えてきました。
それは、
新卒を迎え入れる準備が、会社全体の話になっていないという点です。
採用は人事の仕事。
現場は忙しいから、配属後のフォローは後回し。
新入社員は、なんとなく仕事を覚え、なんとなく馴染むことを期待される。
この構造自体は、決して珍しいものではありません。
むしろ、多くの会社がそうやって成り立ってきました。
ただ、今の学生は、そこをとてもよく見ています。
学生は「入社後」を見ている
学生が「決め手がない」と言うとき、
それは企業の魅力が足りない、という意味ではありません。
・この会社に入った自分を想像できるか
・配属されたあと、誰がそばにいるのか
・困ったとき、相談できる関係があるのか
こうした入社後の風景が見えないことが、
「決められなさ」につながっています。
だからこそ、
見学に来た学生は、高確率で面接に進む
そもそも見学の入口に来ない学生が多い
という現象が起きます。
学生は、説明会の言葉よりも、
その会社の空気を感じ取ろうとしています。
「迎える準備」とは、制度の話ではない
ここで言う「迎える準備」とは、
研修制度やマニュアルの整備だけを指しているわけではありません。
もっと手前の話です。
普段から、学生と接点があるか
採用の時期以外にも、若い世代と関わっているか
仕事以外の場面で、人としての関係が育っているか
こうした日常的な関係性がある企業は、
採用の場面でも、無理に説明しなくても伝わるものがあります。
それは意図してつくる「差別化」ではなく、
時間をかけて滲み出てくる個性のようなものです。
学生は、「会社」だけを見ているわけではない
学生が見ているのは、
仕事内容や条件だけではありません。
その会社で働く自分が、
どんな一日を過ごし
どんな人と出会い
仕事のあと、どんな場所に帰るのか
採用の場面で、
そこまで想像できる企業は、実は多くありません。
学生は、会社を通して、
自分のこれからの生活全体を見ています。
採用の前に、会社の中を見直す
採用がうまくいかないとき、
どうしても外に答えを探しがちです。
新しい媒体。
新しいイベント。
新しい打ち出し方。
もちろん、それらも必要です。
ただ、その前に一度立ち止まって、
こんな問いを置いてみたいのです。
この会社は、新卒を迎える準備ができているだろうか。
普段、誰と、どんな関係を育ててきただろうか。
それは、人事だけの問いではありません。
現場も、上司も、会社全体で向き合う問いです。
迎える準備がある会社は、採用が少し楽になる
普段から学生や地域と関係を築いている企業は、
採用の場面で、無理に言葉を重ねなくても、
自然と伝わるものがあります。
それは特別な取り組みではなく、
日常の積み重ねの結果です。
採用を頑張り続ける前に、
迎え入れる土壌が育っているか。
この視点を持つことが、
これからの新卒採用では、ますます重要になっていくと感じています。
次回は、
ではその「迎える土壌」を、どうつくっていくのか。
対話や時間、文化という視点から、もう少し具体的に考えていきます。