JOURNAL
初出 · Re-birth
「働きたくない」。その理由を、採用する側はどこまで聞けているか。

障害福祉の仕事体験で生まれた、学生たちの率直な問い。
「働きたくない」
障害福祉の事業所で仕事を体験した学生の一人が、振り返りの中でそう話しました。
実は、その学生は仕事への印象が変わったことも話していました。
以前に見た福祉施設とは雰囲気が違ったこと。想像していたよりも若い職員が多かったこと。利用者さんにも職員さんにもそれぞれの個性があり、相性もあること。
知らなかった仕事の一面を知った。
それでも、「働きたくない」。
一見すると、採用する側にとっては聞きたくない言葉かもしれません。でも、私たちはここに、仕事を伝えるうえで見過ごしてはいけない問いがあると感じました。
もし自社の仕事を体験した学生が同じ言葉を口にしたら、その理由をどこまで聴こうとするでしょうか。
■ 同じ仕事体験でも、見えていた景色は違う
今回、仕事体験に参加した学生は3名。後日、就活room tugumiで、体験前後の印象や現場での気づきを振り返りました。
ある学生は、職員さんが対応に追われ、大変そうに働く姿を想像していたそうです。しかし、実際に目にしたのは、明るい表情で利用者さんとコミュニケーションを取る職員さんたちでした。若い職員が多かったことにも驚いていました。
別の学生は、年齢も経験も異なる利用者さんと、うまく会話ができるだろうかという不安を抱えていました。けれど体験を経て、障害や年齢だけで判断するのではなく、一人の人間としてその人の人生や背景をもっと知りたい、と考えるようになったそうです。
そして、「働きたくない」と話した学生。施設への先入観は変わり、職員さんと利用者さんとの関わりにも新しい発見がありました。それでも、自分がそこで働く姿を考えると、ためらいが残りました。
同じ場所を体験しても、受け取るものは違う。
仕事への印象が良くなることと、自分がその仕事を選びたいと思うことは、同じではないのです。

■ 「人と関わる仕事はしたい。でも、配慮がしんどい」
その学生は、人と関わる仕事をすべて避けたいわけではありませんでした。むしろ、人とのコミュニケーションがある仕事には関心があります。
ただ、利用者さんの希望や生活を支えるために、常に相手の様子に気を配ること。それを自分が続けていく姿には、負担を感じたようです。
振り返りのメモには、こんな言葉が残っていました。
「配慮がしんどい」
初めて訪れた場所で、利用者さんとどう接すればいいのか分からない。思いがけない行動や声に、どう応じればよいのか戸惑う。
職員さんは自然に関わっているように見えるのに、自分にはその方法が分からない。メモには「職員さんは気を遣っていないのでは?」という問いも残っていました。
それは、仕事そのものの難しさなのでしょうか。それとも、まだ相手を知らないことから生まれる緊張なのでしょうか。
もちろん、たった一日の体験で、その答えは出せません。学生の「しんどかった」を否定する必要も、「働きたい」に言い換えてもらう必要もありません。
まずは、その感覚がどこから生まれたのかを考えてみたいと思いました。
■ 「なぜ気を遣う?」。議論は仕事の話を超えていった
振り返りでは、こんな問いが出てきました。
「なぜ、利用者さんに気を遣うんだろう?」
「仕事だから当たり前なのかな?」
「サービスを提供する側だから?」
「自然体で関わることはできないのかな?」
気づけば、仕事体験には参加していなかった学生も議論に加わっていました。
相手を尊重することと、自分の気持ちを押し殺すことは違うのではないか。寄り添いたい気持ちが強すぎると、相手との距離が近くなりすぎることもあるのではないか。
そんな話が続き、ある学生からはこんな言葉も出ました。
「支えすぎたら、相手のできることを奪う」
支援とは、何でも代わりにしてあげることではない。相手が自分で決め、自分でできることを大切にする関わり方もあるはずです。
一方で、必要な配慮や安全への対応は、なくしてよいものではありません。
どこまで支えるか。どこで見守るか。自然体でいることと、専門的に関わることはどう両立するのか。
話し合いは、単なる仕事の感想を超えて、人と人との関係そのものを考える時間になっていきました。

■ では、支える人は、誰に支えられているのか
そして、議論はさらに先へ進みました。
学生からは、「職員さんたちのケアはどうなっているのか」という疑問も出ました。
最初は、自分が利用者さんとどう関わるかという話でした。ところが、今度は、毎日そこで働く職員さん自身に目が向いたのです。
困ったときに相談できる相手はいるのか。一人で抱え込まないために、どんな支え合いがあるのか。難しい場面を、職場としてどう受け止めているのか。
これらは、学生の疑問から考えられる問いです。今回の事業所に職員を支える仕組みがない、と判断できるものではありません。どのような支援体制があるのかは、法人の方々に確かめる必要があります。
それでも、この視点にたどり着いたことに、私たちは大きな関心を持ちました。
「どんな仕事をするのか」に加えて、「その仕事をする自分は、どのように支えられるのか」。
仕事の魅力ややりがいだけでなく、働く人を支える仕組みも、仕事を選ぶうえで知りたい情報なのかもしれません。
利用者さんを支える仕事を知ろうとしていた学生が、働く職員さんのことまで考え始めた。
その問いも、法人へ届けたいと思います。
■ 法人は、なぜ「働きたくない」という声まで聴こうとしているのか
今回、仕事体験を受け入れてくださった法人には、学生の声を聴きたい理由があります。
合同企業説明会やインターンシップで、障害福祉の仕事をもっと分かりやすく伝えたい。そのために、学生が何を知り、何に戸惑い、何を知りたいと思ったのかを受け止め、今後の案内や受け入れ方を見直していきたいというものです。
学生のメモには、すでに具体的なヒントが残っています。
利用者さんの特性や好きなこと、普段のコミュニケーション方法を事前に知りたかった。若手職員さんの姿が印象に残った。仕事の一日の流れを知りたい。職員さんが利用者さんとの関わりで感じる喜びも、言葉で聞いてみたい。
さらに、今回の議論からは、働く職員さんを支える仕組みについて知りたいという問いも生まれました。
たとえば、仕事体験前の説明で伝えることを見直す。合同企業説明会で若手職員の仕事をより具体的に紹介する。困ったときの相談先や、チームで支える仕事の進め方を説明する。
こうした見直しは、学生の声から考えられる案です。実施するかどうか、実際に役立つかどうかは、法人の考えや現場の実情と照らし合わせながら確かめる必要があります。

■ 「働きたくない」は、採用にとって失敗だろうか
採用活動では、学生に仕事の魅力を知ってもらい、興味を持ち、応募してもらうことが目標になりやすいものです。
でも、魅力を知ったうえで、自分には合わないと感じる学生もいるでしょう。仕事内容が十分に分からず、不安が大きくなった学生もいるかもしれません。
この二つは、同じ「働きたくない」でも意味が違います。
理由を聴かなければ、学生がどこで判断に迷ったのかも、法人が何を伝え直すべきかも分かりません。
学生に「働きたい」と言わせることが、今回の目的ではありません。
学生が自分で納得して仕事を選べること。法人が、自分たちの仕事が学生にどう伝わったのかを知ること。
その両方があってこそ、仕事体験を採用広報の見直しにつなげることができるのではないでしょうか。
「伝えた」と「伝わった」は、違う。
今回の学生たちの言葉は、そのことを改めて考えるきっかけになりました。
■ まだ、この対話は終わっていない
学生たちの話し合いは、10月26日にも続く予定です。
今度は、自分たちが採用担当者だったら、この仕事の魅力も難しさも、どんな言葉で同世代に伝えるだろうか。そんなところまで考えていけたらと思っています。
学生たちの言葉を整理して、体験を受け入れてくださった法人に届ける。そして、合同企業説明会やインターンシップの内容を考える材料にしていただく。
どんな改善につながるかは、まだ分かりません。答えを先に決めず、法人の方々とも確かめていきたいと思います。
最後に、経営者や採用担当者の皆さんへ、一つだけ。
もし、あなたの会社を体験した学生が「ここでは働きたくない」と話したら。
その理由を、聞いてみたいと思いますか。
「働きたい」という言葉を増やす前に、「働きたくない」という言葉にも、もう少し耳を傾けてみませんか。
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【Re-birthの取り組みについて】
Re-birthでは、就活room tugumiを通じた学生との接点を生かし、学生が仕事を体験し、対話で気づきを言語化する取り組みを行っています。企業・法人の「伝えたい」と学生の「受け取った」の間にある違いを確かめ、採用広報や仕事体験の見直しにつなげています。
Re-birthのVOICE・MEET・Real Viewについて
https://shiga-rebirth.jp/real-view-series?utm_source=note&utm_medium=article&utm_campaign=student_voice_202610
※受入れ法人は匿名とし、個別の学生を特定できる情報は掲載していません。学生の発言と写真は、本人の公開了承を確認のうえ掲載します。