JOURNAL
初出 · Re-birth
【連載】新卒採用を、学生と企業でつくりなおす。(第4回)

第4回|滋賀の採用が、なぜこんなにも難しく感じられるのか
――人がいないのではなく、出会う構造になっていない
「滋賀は採用が難しい」
これは、企業の方と話していると、何度も聞く言葉です。
合説に出ても、思ったように学生が集まらない。
説明会をしても、応募につながらない。
地元志向の学生はいるはずなのに、戻ってこない。
ただ、話を聞けば聞くほど、
「企業側や学生のどちらかに問題がある」という話ではないと感じます。
滋賀の採用が難しく感じられるのは、
学生と企業が出会うまでの“構造”が、うまく噛み合っていない。
それが一番の理由だと思っています。
■ 大学は県外、就職先は滋賀
——探そうとしても、そもそも難しい
滋賀出身の学生の多くは、
京都・大阪・名古屋など、県外の大学に通っています。
就職活動は、多くの場合、
通学しているエリア
日常的に生活している圏域
の延長で進みます。
そう考えると、
滋賀で就職先を探すこと自体が、最初から難しい状態だと言えます。
学生が滋賀を避けている、というよりも、
滋賀の企業を「探す動線そのものが用意されていない」。
この前提を抜きに、採用の話を進めることはできません。
■ 県内大学がある=滋賀就職、ではない
一方で、
「県内に大学があるのだから、滋賀での採用はまだ可能性がある」
と考える声もあります。
ただ、ここにもズレがあります。
滋賀県内の大学に通う学生の多くは、
出身は県外
大学は“たまたま滋賀”
就職は地元、もしくは都市部を希望
というケースが少なくありません。
つまり、
県内大学に学生がいる
=滋賀で働きたい学生がいる
という前提は、現実とは必ずしも一致していない。
この前提のズレが、
「なぜ来ないのか分からない」という感覚を生んでいます。
■ 近すぎる滋賀は、決断されにくい
滋賀は、京都・大阪・名古屋にとても近い県です。
これは、本来は大きな魅力です。
ほどほどの田舎で、すごく良いという学生も多くいます。
ただ、就職という場面では、
この「近さ」が別の作用を生むことがあります。
いつでも行ける
いつでも戻れる
今、決めなくてもいい
近さは、決断を先延ばしにする力にもなります。
遠くの地域には「戻る/戻らない」という覚悟が生まれやすい。
滋賀には、その覚悟が生まれにくい。
これは、滋賀特有の構造だと感じています。
■ 滋賀の企業の魅力は、比較の中で伝わりにくい
滋賀の企業には、
人を大切にする
落ち着いて働ける
長く続けやすい
といった魅力があります。
ただ、こうした良さは、
派手な言葉にしづらい
数字で示しにくい
就活の比較表では見えにくい
という側面もあります。
結果として、
本当は大切にされている価値が、比較の場では埋もれてしまう。
これは企業の姿勢の問題ではなく、
就活の“見せ方の構造”の問題だと思います。
■ 学生が決められないのは、怠けているからではない
就活room tugumiで学生と話していると、
こんな言葉をよく聞きます。
地元で働くのは悪くないと思っている
でも、選ぶ理由が見つからない
失敗したくない
「どんな人がいるのか」が見えない
学生は、企業情報そのものを持っていないこともあわせて、
判断できる材料を持っていない。
決められないのは、やる気がないからでも、
甘えているからでもありません。
関係が見えないまま、選択を迫られている。
それが、今の学生の置かれている状況です。
■ 「滋賀の採用が難しい」の正体
ここまで整理すると、
滋賀の採用が難しく感じられる理由は、かなりはっきりします。
滋賀は、
出会いが設計されていない地域なのだと思います。
情報が足りないわけではありません。
合説の回数が少ないわけでもありません。
日常で出会わない
偶然の接点がない
関係が始まる前に終わってしまう
この構造の中で、
企業も学生も「うまくいかない」と感じている。
■ ただ一方で、学生の動きは少しずつ変わり始めている
構造は厳しいままですが、
最近は少し違う動きを見せる学生もいます。
県外から滋賀の大学に通い、
地域で暮らす中で人や生活に触れ、
「ここで働く」という選択を、後から自分の言葉で選び直す。
そういう学生が、少しずつですが確かにいます。
これは、滋賀の採用環境が急に良くなった、という話ではありません。
ただ、
仕事を「条件」ではなく、「暮らしの延長」で考え始めている学生がいる。
その変化は、見逃せないと感じています。
■ 地元特有の“善意”が、逆効果になることもある
あわせて感じているのは、
地方特有の“無言の圧”についてです。
地元に帰ってきて当たり前
実家がある場所は素晴らしい
地域に残るのが正解
こうした言葉や空気は、
悪意ではなく、善意から生まれていることがほとんどです。
ただ、学生はとても敏感です。
「選ばされている」
「縛られている」
そう感じた瞬間に、心を閉じてしまう。
地域を大切にすることと、選択を縛らないこと。
このバランスを間違えると、
かえって人は離れていきます。
■ だから、滋賀では採用のやり方を変える必要がある
滋賀で採用を考えるなら、
全国と同じやり方では、うまくいきません。
必要なのは、
一度で決めてもらうことではなく
判断できる時間を一緒につくること
説明よりも、関係を先につくること
滋賀では、
採用は「情報を集める場」ではなく、「関係が始まる場」
として設計し直す必要があると感じています。
■ 次回予告
次回は、
滋賀で「続く採用」ができている企業に共通していること
について書きます。
新卒が辞めにくい企業、
学生が納得して選んでいる企業は、
どこで何をしているのか。
就活room tugumiで見えてきた実例をもとに、整理します。