JOURNAL
初出 · Re-birth
「ハローワーク求人はブラックに見える」と学生が言った。では、ナビサイトはホワイトなのか。

滋賀で、学生と企業をつなぐ就活room tugumiを運営し、日々学生の声を聞きながら企業の採用支援も行っています。その現場で見えてきた違和感です。
最近、学生と話している中で、こんな言葉が出てきました。
「ハローワークに出ている企業って、ブラックに見えるんですよね」
なかなか強い言葉です。
そして、少し乱暴な言葉でもあります。
もちろん、ハローワークに求人を出している企業がブラックだ、という話ではありません。
地域の中小企業にとって、ハローワークは大切な採用手段のひとつです。
大手企業のように大きな広告費をかけられない企業にとって、公共の求人サービスを使うことは、とても現実的な選択です。
また、採用広告にかける費用を抑え、その分を今いる社員さんの福利厚生や教育に回している企業もあります。
だから、
「ハローワーク求人=ブラック」
と決めつけるのは、かなり雑です。
ただ、そこで話を終わらせてしまうと、見落としてしまうものがあります。
学生は、なぜそう感じるのか。
どこから、そう判断しているのか。
そこを考える必要があると思いました。
学生は、何もないところから突然そう言っているわけではありません。
キャリア課で聞いた話。
友達との会話。
先輩の体験談。
ネットで調べて出てきた情報。
口コミや相談記事。
SNSで流れてくる、就職にまつわる失敗談。
そうしたものを、自分なりにつなぎ合わせながら判断しています。
もちろん、その判断がいつも正確とは限りません。
ネットの情報には偏りもあります。
友達の話も、その人の経験にすぎないことがあります。
でも、学生にとって就職はかなり大きな決断です。
知らない会社に応募する。
知らない大人に会いに行く。
知らない職場に入っていく。
その前に、できるだけ危なそうな入口を避けたい。
失敗したくない。
雑に扱われたくない。
そう思うのは、自然なことです。
学生がハローワーク求人に不安を感じる理由のひとつに、
「採用にお金をかけていないように見える」
という感覚があるようです。
無料で出せる。
誰でも出せそうに見える。
学生から見ると、どこまで確認されているのか分からない。
学生に向けて情報を整えている感じがしない。
そういう印象が重なると、学生はこう考えるのかもしれません。
「この会社は、人を採ることに本気なのかな」
「若い人に向けて、ちゃんと説明しようとしているのかな」
「とりあえず求人を出しているだけなのではないか」
もちろん、これも正確とは限りません。
採用にお金をかけられないからといって、悪い会社とは限りません。
むしろ、広告費をかけずに、地道に人を育てている会社もたくさんあります。
ただ、学生は会社の中身をまだ知りません。
だから、見えるもので判断します。
情報が新しいか。
会社の雰囲気が分かるか。
働いている人の顔が見えるか。
入社後の流れが想像できるか。
質問してもよさそうか。
見学に行ってもよさそうか。
そういう材料が少ないと、不安は大きくなります。
特に、古い情報が残っていることも大きいのだと思います。
求人情報が更新されていない。
採用ページが何年も前のまま。
写真が古い。
今いる社員の雰囲気が分からない。
仕事内容の説明が、誰に向けて書かれているのか分からない。
企業側からすれば、単に忙しくて更新できていないだけかもしれません。
内容が大きく変わっていないから、そのままにしているだけかもしれません。
でも学生には、そうは見えません。
「情報が古い」ということは、
「人を採ることも後回しなのかな」
「入社後のフォローも雑なのかな」
「会社の中の感覚も古いのかな」
というふうに、会社の姿勢そのものとして読まれてしまうことがあります。
これは、学生がひねくれているという話ではありません。
よく分からないから、不安になる。
見えないから、悪い方に想像してしまう。
自分を守るために、少し疑って見る。
その結果として、
「ハローワーク求人はブラックに見える」
という言葉が出てくるのだと思います。
ただ、ここで一つ考えておきたいことがあります。
では、ナビサイトに載っている求人は、すべてホワイトなのでしょうか。
ナビサイトに載っている企業なら安心なのか。
お金をかけて採用ページを整えている企業なら、学生を大切にしていると言い切れるのか。
もちろん、そんな単純な話ではありません。
ナビサイトは、民間の求人媒体です。
企業がお金を払って掲載し、学生に見つけてもらい、応募してもらうための場所です。
企業は、自社をよりよく見せようとします。
媒体側も、企業の魅力が伝わるようにページを整えます。
場合によっては、掲載プランやオプションによって、見え方や露出のされ方が変わることもあるでしょう。
それ自体が悪いわけではありません。
企業が自社の魅力を伝えようとすることは、採用において大切な努力です。
写真を整えることも、言葉を磨くことも、仕事内容を分かりやすくすることも必要です。
でも、そこには企業の論理も働きます。
よく見せたい。
選ばれたい。
応募してほしい。
他社より魅力的に見せたい。
つまり、ナビサイトの情報は「採用情報」であると同時に、「広告」でもあります。
だから、ハローワークだから不安、ナビサイトだから安心、という話ではないのです。
ハローワーク求人は、情報が少ないことで不安に見えることがある。
ナビサイト求人は、情報がきれいに整えられていることで、逆に見えにくくなるものがある。
どちらが正しいか、という話ではありません。
大事なのは、その求人情報が、どんな仕組みの中でつくられているのかを見ることです。
誰に向けて書かれているのか。
何を見せようとしているのか。
何が詳しく書かれていて、何が書かれていないのか。
なぜこの写真が使われているのか。
なぜこの言葉が選ばれているのか。
そうやって、少し疑って見ることは、悪いことではありません。
むしろ、学生が社会を見るうえで大事な力だと思います。
ただし、疑うことは、誰かを悪者にすることとは違います。
ハローワークを使っている企業を雑に見ることでもない。
ナビサイトに載っている企業をすべて疑うことでもない。
その情報が、どんな仕組みの中でつくられているのか。
そして、自分が何を見せられていて、何をまだ知らないのか。
そこを考えることだと思います。
企業側は、求人を出せば学生に届くと思っている。
学生側は、求人を見る前から不安を抱えている。
企業側は、まじめに採用しているつもりでいる。
学生側は、そのまじめさがどこに表れているのかを探している。
ここにズレがあります。
そして、このズレは、企業の中にいるだけではなかなか見えません。
なぜなら、企業に届くのは「応募があった」という結果か、「応募がなかった」という結果だけだからです。
その手前で、学生が何を見て、どこで不安になり、どの言葉で立ち止まり、どの画面でそっと閉じたのか。
そこは、ほとんど見えていません。
学生は、企業にわざわざ言いません。
「この求人票、少し怖く見えました」
「採用ページの写真が古くて、不安になりました」
「見学してもいいのか分からなくて、やめました」
「若手が活躍という言葉が、逆に引っかかりました」
そう思っても、何も言わずに離れていきます。
企業側からすると、ただ「応募が来なかった」という結果だけが残る。
でもその裏側では、学生が求人情報を見て、違和感を持ち、応募する前に離れている可能性があります。
これを、私は「見えない離脱」と呼んでいます。
ハローワーク求人そのものが問題なのではありません。
ハローワークだけでは、学生に届ききらない情報がある。
ナビサイトだけでは、見えにくくなる現実がある。
採用ページだけでは、伝わらない空気がある。
だからこそ、求人情報をどこに出すかだけではなく、学生がそれをどう受け取り、何に不安を感じ、どこで立ち止まっているのかを見る必要があります。
「うちはブラックではありません」と説明することだけでは、たぶん足りません。
学生が安心して知ることができる入口をつくること。
古い情報をそのままにしないこと。
働いている人の顔や空気が見えること。
入社後の育ち方が想像できること。
見学だけでも行けること。
質問してもいいと思えること。
そういう小さな情報の積み重ねが、
「知らない会社」から、
「少し知っている会社」へ変わるきっかけになります。
Re-birthでは、こうした学生側の見え方をもとに、求人票・採用ページ・ナビサイト・SNSなどを確認する「学生目線の採用導線診断」を行っています。
現役の学生が、企業の採用情報を初見で見たときに、どこで安心し、どこで不安になり、どこで離脱しそうになるのか。
その反応をただの感想で終わらせるのではなく、企業側が実際に直せる言葉や導線に翻訳していく取り組みです。
学生の違和感は、いつも正しいわけではありません。
でも、その違和感を「偏見」として片づけた瞬間に、企業は大事な入口を見落としてしまうのかもしれません。
求人情報は、ただ条件を並べるものではありません。
学生にとっては、その会社との最初の出会いです。
その出会いで、何が見えていて、何が見えていないのか。
ハローワークか、ナビサイトか。
どちらが正しいかではなく、学生がどこで不安になり、どこで立ち止まり、どこで少し安心できるのか。
そこを見ていくことから、これからの採用は始まるのだと思います。
もし、自社の求人票や採用ページが学生にどう見えているのか気になる企業さんがあれば、一度ご相談ください。
【Re-birthの「採用導線診断」の詳細・お問い合わせはこちら】
https://rebirth-tugumi.hp.peraichi.com/
「応募が来ない理由」は、条件や知名度だけではなく、学生が応募前に見ている小さな違和感の中にあるかもしれません。
次回は、求人票や採用ページでよく見かける言葉について考えてみたいと思います。
たとえば、
「若手が活躍しています」
という言葉。
企業としては、若いうちから挑戦できる、チャンスがある、年齢に関係なく任せてもらえる、という前向きな意味で書いているのだと思います。
でも学生は、ときどき違う読み方をします。
「若手に負担が寄っているのかな」
「教育がないまま、いきなり任されるのかな」
「ベテランが辞めているのかな」
企業が伝えたいことと、学生が受け取ることは、必ずしも同じではありません。
次回は、
「若手が活躍」という言葉は、学生にどう読まれているのか。
そこを考えてみたいと思います。